みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
ウチの指先と、まったく同じタイミングで消しゴムを拾ってくれようとしはった各務くんの指先が、チョンと触れ合ってもうたんや。

きょうび、そないコッテコテのシチュエーション、少女マンガでも見かけへんけど……。

ほんでも実際、異性と指先が触れ合ってしまうと、腐女子のウチでさえ、素の部分の乙女心がドキンと敏感に反応してまうんやさかい、ホンマ、カラダは正直なもんやと思う。

その出来事は、何げない小学校生活の1ページやったけど、それが各務くんに対する淡い恋心を認識した瞬間やった思うわぁ。


まぁ、もともと彼はやさしかったけんど。

あるとき、ウチが重そうに給食を運んどると、自分は当番でもないのに、やってきて運ぶのを手伝ってくれはったことがあった。

またあるときは、日直やのに黒板の上のほうまで背が届かんと、チョークの字を消せずに呆然と立ち尽くしとると、ウチの後ろから現れてサッサと消してくれはったこともある。

いずれのときも共通していえるんは、ウチが「おおきに」と言うと、彼はニコッと微笑んで去ってしまういうことやった。

恩着せがましさなんて微塵も感じさせへん、そのさりげなさが、逆に心の中に強く印象づけらえたのはいうまでもあらへん。


あないな恋文をもろうてしもうた今になって考えると、彼はアノ頃からウチに好意を抱いてくれとったんかもしれへん。
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