みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~

「そうね。各務さん、調子はいかがかしら?」

…と冗談っぽく言うと、今度は一葉の後ろに立って、彼女の絵を覗き見る先生。

ウチの絵とまったく同じ構図の絵が描かれとるけど、全体的に雑な感じがする。

実は彼女、各務くんとは双子やのに、絵はそない上手いことあらへんのや。


「仲がいいのはいいことだけど、なにも同じ絵を描かなくてもいいんじゃない?」

…と呆れたような声で言う先生がおった。



      ×      ×      ×



それから1ヵ月後の美術の時間―――


ウチらは黙って美術室の教壇に立つ辺見先生に注目しとった。

「今日は美術の授業をはじめる前に、みなさんに報告することがあります。このあいだ、みなさんに神社の絵を描いてもらいましたが、このクラスのある人の作品が絵画コンクールで“最優秀賞”を受賞しました」


「えっ!? 誰の絵や?」

「どうせ太宰に決まっとるばい」
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