みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~

「はい♪」

満面の笑みで席を立つと、スタスタと教壇に向かって歩いていく一葉。

ソレを見てウチは、膝の裏でガラッと椅子を後ろに押して、席から立ち上がった。



「待ってください! どうして各務さんの絵が最優秀賞なんですか!?」



質問ぜずにはおれへんやった。

「“どうして?”って……それは各務さんの作品が他の人の作品より…」

先生がそこまで言うたとき、ウチはその言葉をさえぎるように、イッキに早口で、こうまくし立てた、

「ウチ、一生懸命に描いたんです! ズルして描いた各務さんの絵がなんで最優秀賞なんですか!? 同じ場所の絵を描いたんですよ! 同じ絵やのに、どうしてウチの絵が最優秀賞じゃないんですか!?」

チラリと一葉のほうを見ると、彼女は不安そうにうつむいとった。

「太宰さん、あなたは確かに絵が上手いわ。それはクラスのみんなだって知ってる。でも、だからって、あなたがいつでも賞を取れるとは限らないのよ」

「…!?」

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