みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~

気分を害したように、眉間にクッキリとシワを浮かび上がらせる先生。

「生意気言わないで! 中学の美術教師とはいえ、あたしだって芸術家のはしくれよ!
あなたよりたくさん絵の勉強をしてるし、仮にもあたしは先生よ! あなたに分かって、あたしに分からないことなんてないわ!」

どうやらウチのさっきの発言が、彼女の芸術家としてのプライドをめっちゃ傷つけてしもうたようや。

ほんでも先生がどないにブチ切れようが、譲れへんもんがウチにはある。


「じゃあ、一葉、証言してや。あの絵はズルして描いたニセモノやって」



「………」



一瞬の間。



そこには一葉のためらいのような感情があったんかもしぃひんけど、やがて静かに彼女はこう言った…、



「……いいえ、あの絵はボクがちゃんと自分で描いたホンモノです」

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