みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
「か、一葉っ…」
ウチは彼女の発言に、自分の耳を疑っとった。
友達やと思っとった一葉に、こないなところで裏切られるやなんて夢にも思わんやった。
不意打ちのストレートパンチを食らってダメージを受けてるウチに対して、さらに先生が負い打ちをかけはる。
「確かに同じ構図の絵だった。でも美術の先生としてハッキリ言うわ。各務さんの絵のほうか色使いがよかった。だから選んだのよ」
「………」
言いたい文句は腐るほどあった。せやけど、あまりのショックで言葉が出えへん。
そのときのウチにできるこというたら、うつむいて涙ぐむことだけやった――――
「美佳……」
うつむくウチの耳に一葉の声が聞こえる。
「そっとしておいてやりなさい」
今度は先生の声が聞こえる。
「でも先生……」
「友達として辛い気持ちは分かるけど、今は一人にしてあげなさい」