みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~

「先生……ボク……」

その一葉の声が微かに涙声やった。

「そんなに気にすることないわよ」

先生の声は笑ってる感じやった。

「………」

だけど一葉は先生に返事をしないでいるみたいやった。

「各務さん、あなた、最優秀賞をもらったのよ。もっとそのことを喜ばなくちゃ」

「………」

「太宰さんがなんと言おうと各務さんの絵が最優秀賞なのよ。芸術家のあたしが言うんだから絶対に間違いないわ。太鼓判を押してあげる」

「はい……先生」

努めて明るく、という感じで答える一葉の声が聞こえる。


そのときウチは、各務一葉が最優秀賞を受賞したという事実は、もはやどないしてもくつがえされへんいう現実をイヤっていうほど思い知らされた―――――



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