みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
その日の放課後。
西日の当たる下駄箱でウチが靴を履きかえとると、背後から誰かが近づいてくるような足音がした。
ふと見ると、ウチとハチ合わせになって、気まずそうな顔をしてはる一葉がおった。
「あ、あのくさ、美佳っ……さっき、美佳はボクに“絶交”って言ったけど……」
たしかにさっき、ウチは彼女に「絶交」って言うた。
そして「絶交」やと言った以上、もう彼女とは金輪際、二度とクチはきかへん。
「機嫌ば治してん……なぁ、美佳、いっしょに帰ろ……? なぁ? なぁ、って……」
ウチは一葉になどかまわず、とっとと一人で下駄箱をあとにした。
校舎の外に出ると、西日に照らされ長い影を伸ばしたグラウンド脇の白いポールの上の大時計が4時15分を指しとった。
6月×日、16:15
ウチは、福岡県のコノ町で出けた最初で最後の友達を失った。
たぶん各務一葉は、ウチの人生の中で作る最後の友達やったと思う―――――