みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
そんな女帝の姉・有紀と、ひょっとしたらもう顔を会わなんでもええようになるかもしれへんと、微かな期待を抱かせるような出来事があった。

それは夏服に衣替えした最初の週末のこと。


姉が生まれてはじめて作った“カレシ”を、わが家の夕食に招待したんや。

美人やから、もともと男の子にはモテモテの姉やったけど、性格ブスで気が強くて高飛車な彼女は、これまで何人もの男の子たちからのラブコールをムゲに断り続けとった。

そんな姉が、わざわざカレシを家に招待したいうことは、ウチら家族……いや父にそのヒトを紹介したかったからなんやと思う。


…ってことは、もし姉が、そのカレシと結婚でもするようなことになれば、姉はこの家から出ていくことになる。

いや結婚までいかんでも、カレシの部屋に転がりこんで“同棲”でもしてくれはったらええのに、とウチは思うけど、そんなのクチうるさい父が許すわけあらへん。

いずれにせよ、ウチ的には1日も早よ女帝を引退して、そのカレシの奥方になってくれることを心の底から強く、強く強く希望する。


ココ数日いうもんは、ウチも父も妹の文(アヤ)も、姉がどないなカレシを連れてくるんか何日も前からアレコレ妄想を膨らませては、落ち着かへん毎日を送っとった。

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