みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~

こーいうコッテコテのシチュエーションで恋に落ちるあたり、落とした消しゴムを拾おうとして指先が触れ合った各務くんに恋したウチと、まったく同じやん。

まさか、こないところでウチと姉が、同じ親から、同じ血を引いて生まれた者同士やと認識するとは思わへんやった。


まぁ、それはともかく、1日でも早よう姉と顔を合わさんで済むような日が訪れることを夢見とったウチなんやけど、さすがに姉が香港からきた劉揚明さんと国際結婚することになるのかもしれへんって考えると、複雑な心境になってしもた。



今回のことは、故郷・香港を離れ、ひとり異国の地で暮らしてはる劉揚明さんに、いわゆる家庭の味ってヤツを食べさせてあげたいという姉からの提案やったらしい。

そこまで言うなら、姉が彼のために手料理のひとつでも作ってあげればええはずやのに、今回も当たり前のようにウチが料理を作ることになった。

香港出身の彼に家庭の味を味わってもらういうても、ウチが作れる中華料理はギョウザに酢豚、あとは卵の中華スープくらいのもんで、その他は父が店長をやってはるドラッグストアーからインスタントのモノを調達してくるよりほかに手はあらへんやった。


それでも彼は料理をひとくちクチにするたびに「オイシイデス」を連発してくれはった。
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