みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
内心、そないなふうに思いながらも、ウチはタオルで手を拭いてエプロンを外すと、お気に入りのミュールにつま先をつっかけて、慌てて劉揚明さんのあとを追うことにした。



      ×      ×      ×



慌てすぎてるせいで、アパートの階段を降りる途中、ミュールの片っぽをフッ飛ばしたりしながらも、それでも家から100メートルと離れてへんところで劉揚明さんの後ろ姿を見つけることがでけた。

ウチが慌てて追いかけたのはモチロンやけど、こないに近い距離で彼に追いつくことがでけたのは、街灯にうっすらと照らし出されたソノ場所に、彼が立ち止まっていてくれはったせいでもある思うわぁ。


彼が立ち止まっていた場所、そこは淡いブルー系やグリーン系の大きなゴミバケツがぎょうさん置かれた路肩のゴミ集積所やった。

“そないところでナニしてはるんやろ?”

そう思いながら少しずつ歩みを進めていると、彼はおもむろにひとつのゴミバケツのフタを開けて、手に持っとった袋をその中に放り込んだ。


「…っ!?」

思わず声を上げそうになって、ウチは右手で自分のクチを押さえた。
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