みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
彼を追いかけて慌てて家を飛び出してきたさかい、ウチはケータイを持ってへん。

…ってか、そもそもウチのケータイとは着メロがちゃうし。


「ハーイ、劉揚明デース」


着信があったのは彼のケータイやった。

「オゥ、サヤカ~♪」

彼の声はアホみたいにデカくて、10数メートル離れてるウチの耳にも、エコーがかかったようにワンワン響いて聞こえてくる。


「“サヤカ”って…? オンナからの電話?」

ウチは思わずつぶやいとった。


「今デスカ? イマ、ボク、サヤカノ部屋ニ向カッテルトコロデース♪」


「…!!」


「……ハ、ハァン……オゥ、馬鹿ナコト言ワナイデクダサーイ♪ ワタシニハ、サヤカガイマース♪ ソレナノニ、浮気ナンカスルハズナイジャナイデスカ~?」


「…って!? アイツ、お姉ちゃんの他にも付き合ってるオンナがおったんや!? クソっ、許せへんっ!!」
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