みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
いまウチにとって問題なんは、アイツは爽やか好青年の仮面を被った世にもサイアクな大悪党、詐欺師やってことを姉に話すべきか、どうかちゅうことや。

ウチは姉のことが決して好きなわけちゃう。

せやから男にダマされた姉のことを、ザマァ見ろって笑ってやることかて出来る。

……けんど、いくらなんでもそないなことはでけへん。

同じオンナとしてできるはずあらへん。


そうやいうて、今、目の前で起きたことを全部包み隠さず姉に話したところで、はじめての恋に天にも昇る気持ちで地に足がついてへん姉が、ウチの言うことに耳を貸すとは到底思えへんし。

それどころか、そないなこと言おうもんなら、姉とのガチンコ真剣バトルの勃発は火を見るより明らかや。

ひょっとしたら血を見るかもしれへん。


何も見ぃひんかったことにして、このまま放置するのんが一番ええのんかな?

他ならぬ恋愛のことに、第三者のウチが横からクチをはさむべきちゃう思うし。


ハァ、ハァ、ハァ…

肩で息をしながら“それにしても……”とウチは思った。
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