みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
ひと眠りしたあと、保健室の外の廊下から聞こえてくる話し声に目を覚ました。
“ガララッ”と保健室の戸が開いて、中に誰かが入ってきたみたいや。
中から完全にカーテンを閉め切っているウチからすれば、聞こえてくる音で向こうの様子を判断することしかでけへんけど……。
「あれ、先生がおらんとぉ」
この声は一葉の声や。100%断言できる。
毎度まいど聞いとる声やさかい、どない寝ボケてても聞き間違えるはずあらへん。
「痛ってぇ……」
そして、これは各務くんの声。
「しかたんなか。ボクが治療しちゃるけん」
「お前、大丈夫とや?」
「ボクは保健係や。任せちゃりぃ」
二人の会話の内容から想像するに、どうやらウチがひと眠りしてるあいだに4時間目の体育の時間になってもうて、さしずめケガをした各務くんに付き添って、一葉も保健室に来た、ってところやろか?
「クッ……しみるぅ」