みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~

「でも石川のヤツ、一葉の顔ば見て、一瞬オレが来たと思ったとやろ? 期待ばさせといて裏切るぶん、お前のはタチが悪かよ」

「だってボク、石川なんかが一樹のこと、好きになったいうんが許せんやったとぉ。それに一樹だって、ボクが石川の下駄箱に恋文を入れるっち言うたとき、それば止めようとはせんかったとやろ?」

「石川には悪かけど、あの女にストーカーみたいなことされて、オレ、気持ち悪か思いばしとったとよ……」

「一樹は別に罪ん意識ば感じることなかよ。そもそもアレはただの“ごっこ”。告白ごっこったい。アハハッ」

そない言うてケラケラと明るく笑う一葉。


確かにこの頃、ウチの学校……特に6年生の間では“告白ごっこ”いうイタズラが男女を問わず流行っとった。

告白ごっこ……、

それは、全然モテそうにもないヒトの下駄箱に、好きやちゅう告白と、いつどこどこに来てくださいみたいに書いた恋文を入れといて、いざ相手が約束の場所に現れると、“バカが見ぃるぅ~♪”とばかりに笑い者にするいうタチの悪いイタズラやった。

告白ごっこが流行っているのは知っとったけど、まさか各務兄妹たちまで、ホンマにやってはったんかと思うと、ウチは衝撃を感じざるをえんやった。

< 70 / 142 >

この作品をシェア

pagetop