みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
せやけど、ウチは自分というニンゲンに自信がなかってん。
才色兼備で優秀な姉と比較されては、劣等生扱いされ続けるいうんが、それまでウチの歩いてきた人生やった。
おまけに男の子同士の禁じられたBLを妄想したりするような腐女子やし……。
そないなふうに生きてきたウチやさかい、各務くんみたいな美少年が、まさか本気でウチなんかのこと、好きになってくれはるはずあらへんと思ったんや。
せやから、小6のあのとき、せっかくチケットまで用意してくれた映画に、ウチは行こうとしぃひんやったんや。
待ち合わせの場所に行くんが怖かったし、それ以前に心の扉を開いて、素直に各務くんの想いを受け入れることじたい怖かった。
せっかく恋文をもろうたのに、相手の想いを言葉どおりに信じてあげられへんなんて、ホンマ、ウチは少女失格やと思うわぁ。
ほんでもな、カーテン越しやったとはいえ、目の前で各務兄妹から“告白ごっこ”の話を聞かされたら、ウチやのうても誰かて、恋文なんて受け取ろうとはせぇへんかったはず。
いや、初恋の相手の各務くんの想いを信じてあげへんやった自分のアホさを棚に上げて、他人(ヒト)のせいにしようとしてはる時点で、ウチはとっくに失格やと思う――――