みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
今じゃ、妹のペットみたいになってはるけど、ホンマは今もウチのペットや。


実は昨日、友達の家で逃げられたらしいんやけど、ウチに怒られるのが恐ろしゅうて、ずっと黙っておこうとしてはったらしい。

結局、今朝になってウチがエサをあげようとして、ミルクのケージ(※ハムスターを飼うカゴ)の中がカラッポになっとるのに気がついて、妹に問いただしたところ、ようやく白状したちゅうワケや。


「“逃げられた”って。お前、ちゃんと探したんか?」

父の問いかけに、泣きながらコクンとうなずく妹。

「も、モチロンちゃんと探したでぇ……家じゅう全部探したでぇ……そ、そうかてどこにもいてへんやったんやもん……」

ヒックヒックと嗚咽をしながら妹が言う。

「さよか。ほんなら、今ごろはもう家の外まで逃げてもうて、ドブネズミといっしょに生活してはるかもしれへんなぁ」

「…っ!?」

父のノンキな言い草にウチはカチンときた。

「ミルクがドブネズミと共同生活でけるわけないやん! あのコはずっとニンゲンの手で育てられきたさかい、自分でエサなんか獲れへんし、今頃きっとおなかすかしてヒマワリの種を欲しがっとるわぁ!」

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