みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
ウチの返事が彼の想定外のもんやったみたいで、とたんの声のトーンが沈んでもうた。
「うん、ちょっと……」
仮にも初恋の相手やった彼に対して、なんてぶっきらぼうな言い方をしてるんやろう、って自分でも思う。
せやけど、もう二度と話をすることもない思うてた彼からの電話に、どない対処したらええのか決めかねとるところもあって……。
「そっか……困ったばい……」
「………」
「ホントは今すぐ、よっちゃんに来てほしかったとやけど……」
「え……なんかあったん……?」
何げに訊いたウチの問いかけに、彼はウチが夢にも思わへんような返答を返しはった。
「か、一葉が……一葉が死にそうったい」
「えっ……」
彼の発言はあまりに突拍子すぎた。
だからウチはまだその発言の内容を、現実に起きとる出来事として、オツムの中でちゃんと認識することができひんやった。