みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
「なんや、その声の感じやと、文からはまだ電話かかってきてへんっちゅうことやな」
今度こそ、と思ったのに、電話は妹ではなく、父からやった。
なんとも間の悪いタイミングの電話に、父にはなんの罪もないんは分かっとったけんど、それでもついイラついてまうウチ。
「いやぁ、俺もな、ミルクがどないなったんか気になってもうてなぁ、いま仕事もほとんどうわの空状態やわぁ」
「お父はん、こないな電話してはるあいだにも、文から電話かかってくるかもしれへんし、もう電話きるさかいな」
「待った、待った、お前にひと言だけ言うときたいことがあるんや」
「“言うときたいこと”って……」
どーせ“妹をいじめるな”みたいなことを言われるんや思うて、言われる前からすでに辟易(へきえき)する思いやった。
「ええか?美佳。文のことはもう許してやるんや……ミルクが見つかかっても、見つからんでもや」
「父さんはいっつもそうやって文を甘やかすさかい…」
父はウチが言うのをさえぎって言うた、