みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
“今頃、各務くん、どないしてはるやろ……”
不意に、そんな思いが頭をよぎった。
いや“不意に”という表現が違うのかも。
家でじっとしてると彼のことばかり考えてしまうさかい、こうしてココで一心不乱に泳ぎ続けてたワケやし……。
今日のは上映時間1時間37分の映画やさかい、ちょうど今ごろ終わった頃やろうか?
それとも…、
それとも、もしかして約束の時間から2時間も過ぎてはるのに、今も映画館の外で、ウチが来るをずっと待ち続けとったりして……?
やとしたら罪の意識に少なからず胸が痛まへんわけやないけど……。
いや、そないなはずあらへん。
彼が待ってるはずなんてあらへんわぁ。
今頃は、ウチのことなんて忘れて、ポップコーンの油でクチのまわりをギットギトにして、おなかの中、Lサイズのコーラでタップンタップンさせてはるに違いあらへん。
昔から“終わり良ければ全て良し”なんてよく言うもんやけど、あの恋文さえなかったら、キミと過ごした日々も、小学校生活の綺麗な思い出になってたかもしれへんのに……。