みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~

“許す”って……エラソーに、ウチはなにさまのつもりで許すとか許さへんとかジャッジをしようとしてたんやろ?


「よかったァ♪ じゃ、もうしばらく友達ンちで遊んでから帰るさかい」

「うん、お姉ちゃん、急用で今から出掛けるけんど、有紀ネェが留守番してはるわぁ」

「分かった。ほなね」

「ほな」

受話器を置いたウチは、自室でCDを聞いとった姉に留守番を頼むと、取るモンもとりあえず、お気に入りのミュールにつま先をつっかけて自宅アパートをあとにした。

行く先はもちろん一葉が担ぎこまれたという西市民病院やった――――



      ×      ×      ×



自宅を出てから約5分後、メラメラとアスファルトに燃え上がる陽炎(かげろう)の向こうに、自宅最寄りのバス停が見えた。

ハァ、ハァ…

息を切らして駆け寄ると、時刻表で次のバスが来るのは10分後やと分かる。

けど10分っていうのは実に微妙や思う。
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