みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
人目もあるし、それ以前に真夏の太陽にジリジリと照りつけられたフライパンの上のような道路を裸足で走るなんてこと、まるでどっかのお坊さんがやってはる“火渡りの行”みたいやし、そんなんできるはずがあらへん。
とにかく、じっと立ち止まってることなんてできひんし、どない汗が気持ち悪うても、どんだけ走りにくうても、ミュールをペッタンペッタンやりながら走り続けた……いつかバスがウチに追いついてくれることを信じて。
走ってる途中でふと思った、そーいえば友達のために走り続けはったヒトの物語を昔読んだことがあったな、って。
たしかタイトルは『走れナントカ』って。
たぶん走っとるうちにアドレナリンが分泌されてきたんやと思う。
気がつけば自分がだんだんハイな気持ちになってきてるんが分かる。
ほんで……、
結局、走って“西市民病院”まで到着したとき、ウチの背後からバスがやってきた。
「整理券をお取りください」
「ワレ、今ごろ遅いんじゃ、ボケー!」
ウチは肩で息をしながらバスの中から聞こえてくるアナウンスにツッコミを入れた―――