みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
第5章「思ひ出タイムトリップ」
病院の受付で一葉のことを尋ねたウチは、ミュールの足音を病院の廊下に響かせながら、ICU(集中治療室)へと早足で向かった。


すると部屋の前の廊下には、各務くんともう一人……各務兄妹の父親の姿があった。

前に飴をかんで奥歯の銀の詰め物が取れてしもうたとき、兄妹の父親の歯科医院に行って会ったことがあるさかい分かる。

ほんで小学校を卒業して以来の再会となる各務くんは、たぶん附属中学に行って勉強をしすぎたんやと思うけど、目を悪くしたらしく、フレームの細い、いかにも頭のよさそうに見えるメガネを掛けてはった。



「よ、よっちゃん、来てくれたとね……」



ウチの姿を見て一瞬驚いたみたいやったけど、すぐにメガネの下の目を細めてくれはった各務くん。


ハァ、ハァ…。

ウチは肩で息をしながら、黙ってうなずいた。

「ど、どうも」

そない言うて兄妹の父親には頭を下げる。

「キミはたしか前に私の病院に来てくれたことがあるね?」

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