みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
「オレの足、こぎゃんやし、ハナから泳ぐつもりはなかったし、どこまでも広がる青い海ば見て、潮風に当たっとるだけで、気分は爽快やったとやけど、人間ってゆうのは現状の幸せには満足できん生き物ったいね」
「え?」
「どぎゃんしてん水の感触を肌で感じてみたくなって、足だけ温泉に入る“足湯”やなかけど、“足だけ海水浴”ってことで、裸足になって海に足ば浸けてみたとぉ」
「ハハッ、足だけ海水浴かぁ。ウチ、今年の夏はまだ海に行ってへんし、足だけでもうらやましいわぁ」
ウチはのん気な感じでそう返したんやけど、ソレに対する各務くんの返しの言葉が、ウチのお気楽ムードを払拭させてもうた。
「けんどな……けんど、そんときオレが足ば滑らせて海に落ちたもんやけん、アイツ、慌てて海に飛び込んでくれたんやけど……オレを助けた時点で力尽きたみたいで、今度はアイツが溺れてしまったとぉ……」、
「そっか……女の子の体力で溺れてはる男の子を助けるんは、しんどかったんやろうな」
「さいわい近くにおった釣り人のおじさんが一葉を助けてくれたとやけど……」
ウチの知らへんところで、各務兄妹の身にそないなことが起きてたやなんて……。
もしウチがいっしょにおったら、泳ぎの得意なウチがすぐに助けてあげられたやろうに……と思うと罪悪感を感じひんわけちゃう。