かみさまの椅子


「あぁありがとな、そこの人」

赤い実を溢れる程腕に抱えた青空にお礼を言いながら店のおいチャンがここに入れると言うように籠をずいっと出してきた。


「大変でしたねー」

さも自分が追われていないかのように他人の振りをする青空、ドサドサと実を籠に入れていく


「ちょい、この実はデリケートなんじゃからもっと丁寧に入れんかい」


「あっごめんなさい」

すぐさま謝る青空だが露店のおいチャンは実を一つ取って裏を見る。

「ほれ見ぃ」

青空に赤い実を見せる、確かに赤い皮が傷つき身が弱くなっていた。

「傷つけたんじゃから全部買いな」

「何その押し売り!!しかもそれ私が付けたんじゃないし!!」


実を全部籠に入れ全部買えと言うおいチャンに一銭も持ってない事を言うと、しけとんのぉ……と言いながら何故か商品にならないからと青空に赤い実を全部くれた。

「むふふ、善いことしたかも」

赤い実を見ながら満足げにニコニコ笑みを浮かべる青空。

飛行場にさぁ戻ろうとした時、ふっと気づく


あれ私さっきまで赤い実なんて抱えてなかったよね……しかも手ぶらだったよね…………







「買った物忘れてんじゃん!!」


さっきまで持っていた買い物の品を思い出し急いで取りに戻ろうと振り返る


「あっ……」


顔が一瞬引きつる


そこには先ほど絡んで来た柄の悪い集団の一人が居た。

「ラッキー、白獅子と一緒に居た奴じゃん」

ヘラヘラ笑いながら青空に近づく男

「白獅子の奴上手い事俺らの事蒔きやがってよ見つからねぇんだ」


まずいと悟り青空の額に冷や汗が滲む


「居場所教えて」

ニヤリと口角を上げ手を伸ばす、青空はとっさに後ずさる。




ごとり



抱えていた赤い実が一つこぼれ落ちた。





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