かみさまの椅子
からんからんとドアに付いているベルが来客の報せを告げて数人の足音が室内に入ってくる。
昼間だというのにそこは薄暗く窓から差し込む大陽の光が眩しく感じる。
「おーいらっしゃい」
足音が止み奥のカウンターで静にグラスを磨いていたマスターは顔を上げ薄暗い中でもはっきりと分かる白銀の髪を持つ見知った奴がいて軽い挨拶をする、が相手は眉一つ動かさずその長くて逞しい腕を伸ばしマスターのよれた白いシャツの胸ぐらを乱暴に掴み無理やり引き寄せる。
「随分いい商売が出来たみたいだな、あぁ」
地の底から這い出るような低い声にマスターの背筋に鳥肌が立つ。
「何言ってんだ白獅子の旦那よ」
「俺らの情報を売ったらしいな」
「それが何か?情報屋はそれが商売なんでね」
強張る表情筋を無理やり動かし営業スマイルを浮かべるが相手はピクリとも動かさず無表情のまま
「昔の契約を忘れた訳じゃねぇよな、忘れたなんてほざけばてめぇの大事なその左目潰すぞ」
片手をすっと伸ばしマスターの左目に軽く触れる。
触れられた瞬間マスターは急激に体温が下がり冷や汗が額にぶわりと滲み出た。