かみさまの椅子
「これ」
白衣のポケットから細長いビンがカウンターに置かれ、中には赤紫色の液体がゆらゆらと揺れている。
「あんたにはまだまだ世話になるんだ、死んでもらっちゃ困る」
男の言葉に不思議そうにビンと男を交互に見る、一瞬左目が赤く煌めくが直ぐにくすんだ青色に戻り次には全てを理解したように頷きビンを手にする。
「いかんな平和ぼけしたせいで危うく死ぬところだった、これは有り難く頂くよ」
「上手く使えよ」
一言言葉を残し男は先に行った者達の後を追い残ったマスターはふうとため息を零す
「さっさと店仕舞いするか」
カウンターの下から一本の鍵と一枚のディスクを手近の皮製のショルダーバックに入れる、ガタガタと音がし窓の外を見れば何人もの人影が見える
「待ってたよ首猟ジェスーさんよしかしもぅ営業は終了したから他を当たってくれ、あんたに売る品は無いんだ」
「そいつは残念だ」
ガタン!と扉が吹っ飛び一人の長身の男が室内に現れた。
「ならそのちっぽけな命でもくれよ」
暗い室内から戸口に立つ男は大陽の逆光により殆ど人の形にしか解らないがニヤリと口角が上がり嫌な笑みを浮かべたのは理解し、ぞくり鳥肌がたった次には持っていたビンを投げつけた。