捨てられたプリクラ帳 ―復讐―
家に帰り、ベッドの上で
私は例の紙をポケットの中から出す。



くしゃくしゃになっている紙の
隙間から咲、という字を見つけ、
ぎくりと身を動かした。



何、こんな時まで咲月?
それとも、関係ないの?



急いで紙を広げる。
桜の花びらが散りばめられた
和風の便箋だ。
そして、内容はこうだった。



伊藤咲月先輩へ


僕は1年D組の中村悟と言います。
この学校に入学してから
ずっと伊藤先輩のこと、見てました。
伊藤先輩は僕の憧れです。


伊藤先輩はまだ僕のことを
知らないでしょうが、
僕はもうじき管楽器に編入するので、
せめて名前を知っておいて下さい。


ちなみに、前まではサッカー部でした。
でも、伊藤先輩と共に楽しい時間を
過ごしたいあまり、苦手な音楽も
挑戦してみようと思ったのです。


部活がとても楽しみです!


1・D 中村悟



こんなことを書く1年生もいるんだ。



正直な感想だった。



伊藤咲月先輩へ、この部分を読んだ時、
私は早くも失望していた。



中村トオルだかサトルだか知らないけど....
この子に感謝しなきゃね。


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