スカイ・フラワー
…ーーー

車内は甘い香りがして乗り心地は良かった。それに、山地のお姉さんは気さくで明るい人で、現地に着くまで話しは尽きなかった。

特に、山地の子供の頃のドジな話ベスト10は俺のツボを押さえた。


ーー…車に揺られる事二時間弱。

「ついたぁーーーーっ!」

山地は車から飛び出ると海に向かって叫んで背伸びした。

俺は久しぶりに海というモノを見た。

水面に太陽の光りが反射してキラキラ輝く。海と真っ青な空は同化しそうだが、うっすらと水平線があり、僅かに曲を帯びて見える。

「じゃあ、後は歩いて行けるわね?」

「うん!サンキュー!」

「ありがとうございました」

「いいのよー!何かあったら連絡しなさい?じゃあねー」

「ばいばーいっ!」

俺は頭を下げて小さくなる車を見送った。



そこから山地の叔母さんの店までは、そう遠くはなかった。

その店の隣りには大層ご立派な別荘が建っていて、目を見張った。

しかし、もっと目を見張ったのは…目の前に、花屋がある事だった。

「…フラワーショップ・あおい屋……」

俺は心なしか拍子抜けしてしまった。海に来て、まさか花屋のバイトだとは誰も思いつかないだろう。
< 10 / 104 >

この作品をシェア

pagetop