スカイ・フラワー
どうやら、山地は真弓さんから隣りの別荘に来る同い年の女の子が大方の目当てであったらしい。

しかし、その女の子がまさか、同級生だとはさすがの山地も予想できなかったのだろう。

でも、山地の気楽な性格では一緒に遊べる友達が誘う事なしに来た!という理解に繋がったらしく、上機嫌になっていた。


「……というわけなわけよ!で、そちらは?」

山地は軽快な口調で俺達の経緯を語り終わると、テーブルの正面に座る二人に話しを聞いた。

俺は結露していて水滴のついたコップに入った麦茶を一口含んだ。

冷たい液体が食道を伝うのが分かる。

「私達は、千広のいとこの家に泊まらせてもらってるの。本当は別荘に居たんだけど、ご飯とか面倒だったの。そしたら、ココに泊まっても構わないって言ってくれたから二日前くらいからね」

長月の説明に隣りの高円寺はコクコクと頷いている。

「へぇー!高円寺ってリッチだなー!お嬢様じゃん!」

「そ、そんな事ないわっ…!」

高円寺のはにかんだ様子を見ていた俺は、長月の視線に気付き目を長月に向けた。

「ねぇ…」

長月が何かを言おうとした時、真弓さんが「昼ご飯できたわよー!」と言ってカレーを持って来た為、長月の言葉は遮られた。

俺は敢えて何を言いかけたかは聞かなかった。

面倒だったわけじゃないが、あまりにカレーが美味しくて夢中で頬張っていたからだ。

自分が酷く腹を空かせていたのと、山地の言う通り真弓さんの料理の腕が確かなのが分かった。

長月も気にしていない様子で、「おいしーっ!」とカレーを食べていた。

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