スカイ・フラワー
「長月、気付いたか?庭の紫陽花散ったの」

「あぁー!そうなのよね!いつの間にか散っちゃっててさぁ………あっ」

「何だよ」

「前に聞きそびれたんだけどさ…」

「ん?」

「紫陽花の花言葉っ」

「あぁ」

そう言えば、言おうとしたけど…言えなかったな…。

「『あなたは冷たい』」

「…え?」

「紫陽花の花言葉さ」

「何かマイナスな感じがしない?」

「仕方ないだろ。俺が決めんたんじゃねーんだから。それに、花言葉って言っても同じ花にも色々なのがあって、本によって違う場合もあるからな」

「へぇー。何か面白いわね」

「『元気な女性』」

香は少し笑って言った。

「何それ」

「紫陽花のもう一つの花言葉…」

「今度はプラスな感じね」

「これでプラス、マイナスゼロだな」

「つまらんっ」

山地が突っ込んで、俺達はしばし笑いあった。


それから一時間。

俺達は宿題に集中した。話しはしながらも、手を動かして宿題を進めた。


時刻は午後四時。


そろそろ、宿題にも飽きてきた。山地に至っては提出テキストにマジマジとラクガキを描いている。

コイツまた呼び出しくらうぞ。

目の前の女子二人はまだ黙々と勤勉に励んでいる。

高円寺はスラスラと数式を解いてく。記号や数字を書く手が休まない。

高円寺は俺達のクラスでも五本の指に入る程に頭が良い。

それに比べ、長月はシャーペンの動きが完全に止まっていた。

高円寺と同じ数学のテキストだ。どうやら、不等号の証明でツマっているらしい。

俺は何気に数学が得意だ。が、長月の性格からして俺が教えようとすれば確実に機嫌を損ねるだろう。

勿論、その矛先は俺に向けられる。

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