スカイ・フラワー
だから、敢えて何も言わずに英文の設問を解く事にした。

ー…10分が経った。

長月の手が動く気配は無い。他の問題でも解けばいいのにと思いながらも、英文テキストの見開き1ページをこなした。

山地は既に完成度の高い絵を仕上げている。どうやら、高円寺の絵みたいだ。

俺は痺れを切らして言った。

「長月、左辺から右辺を引かないと解けねーぞソレ」

簡潔且つ柔らかい口調で言った。なるべく気に障らないように。

でも、長月はムッとした表情をした後、「わかってるわよー」と言ってサラサラと書き始めた。

全く気を使わせてくれる。何だか一気に精神力が減った。

と同時に山地がこの集中包囲網の突破口を切り開く一言が響いた。

「よし!終わったぁ!!」

山地は見事に高円寺の宿題をする姿を仕上げていた。

きっと、今は達成感で一杯なのだろう。

そして、それに顔を上げた高円寺は時計を見て言った。

「もう一時間半もやってたんだ。気付かなかったよ」

「うそ!もう五時半すぎ?」

続いて長月が答える。

よくやったぞ山地。お前の絵の御陰だ。いや、お前のストーカー的洞察力の御陰で何とか終わってくれそうだ。





その後、7時に俺達がまた迎えに行くという事になって、その場は解散となった。

7時になるまで、山地はテキストの端に描かれた渾身の『勉強する高円寺』を眺めながらも俺のベッドの上で潮風に吹かれていた。






その頃、夏葉と千広は…………
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