スカイ・フラワー
「ねぇ。千広って三枝のアドレス知らないの?」

「うん。聞いてないの。夏葉は知ってる?」

「知らないわね。そう言えば」

「そうなんだ…」

「今日聞いたら?」

「…何か緊張しちゃうな…」

応接間の冷房にあたりながらクッキーをかじる夏葉は赤くなった千広を見て羨ましく思った。

「またとないチャンスよ?文化祭の準備の日なんかに聞けないでしょ?」

「そ…だよね…」

「じゃあ、私が山地君の聞くからそれに乗じて聞いちゃう作戦ね!いいわね?」

「う…うん!」

千広の顔も少しばかり緊張のほぐれた表情になり、顔をほころばせた。

千広の恋を応援する立場からすれば、仕方がない。それに、山地君のアドレスと番号を聞いていなかったのも幸をそうした。

私と千広は早速部屋へと戻り、着て行く服を選んだ。

千広にアドバイスをしつつも、私はなるべく地味な服装を選んだ。

千広は何度も鏡の前でブツブツ言いながら服をチェックしている。

千広程の女の子なら何を着たって可愛い。お世辞なんかじゃない。実際に告白された事だってある。勿論、複数に。

そんな千広に好意を抱かれている三枝は何て憎い男だろうか。

きっと、三枝だってこんなに可愛くて頭が良い女の子から「付き合って」と言われたら三言返事だろう。

こんなに奥手にならなくても告白すれば、すぐに話しはつくのに。

7時まで後10分ちょっと。千広は容姿を整えるのに余念がなかった。

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