スカイ・フラワー
「お前さ。やっぱ買い過ぎだろ…花火…」

山地は袋を二つ担いで尚、俺にも花火がタンマリと入った袋を二つ持たせる程の花火を買い占めていた。

「いや~。店の人に怪しい目で見られたよ」

涼しい顔で言う山地を軽く流してインターフォンのボタンを押す。

「今行くぅ」

高円寺の声が返ってきてからすぐに二人は出てきた。

着替えて来た事に山地は相当嬉しいらしい。

「うっわ!ヤベーカワイイ!なぁ三枝!!」

「…そだな」

長月と高円寺が門から出て来ると、海を目指した。

「二人共メッチャ可愛い!!」

「そう?山地君って面白いね!」

長月が笑顔で言った。そして、俺に視線を飛ばした。

なるほど。

「カワイイじゃん?」

若干、疑問系になりながらも慌てて言った。

女の子ってこういうの気にすんのか?別に好意を寄せる相手にだけでいいだろうに。



しかし、香は全く気付いてはいなかった。すぐ後ろに想いを寄せる人物がいる事に。




程なくして、砂浜についた。夕陽はもう殆ど海の向こう側へと姿を消し初めている。空と雲がそれを惜しむかのように茜色に染まる。

綺麗な風景に四人は暫くの間、砂浜に座り移ろいゆく黄昏時を眺めていた。






「綺麗だったね」

高円寺は静かにこぼした。

「そうだね!」

「あぁ」

「そうね」






黄昏を満喫した俺達が花火大会をおっぱじめるのは、この余韻に浸った後からだった。


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