スカイ・フラワー
「線香花火も最後になっちゃったね…」

高円寺は最後の線香花火を配って言った。

「線香花火っていいよな」

俺は何処と無く呟いた。それに長月が答える。

「なんで?」

「一番、花っぽいだろ」

「そう?」

「うん。夜空に咲く花もいいけど、こうして真近に見れて、静かに見る花もまた風流でいいと思わないか?」

「何格好つけちゃって」

「せっかく盛り立てようとしたのによ」

「柄じゃないわね」

長月は手元で火花の散る線香花火を眺めたまま小さく微笑んだ。

その火花で照された長月の顔は何故か俺の胸の鼓動を大きくさせた。

「あ!落ちちゃったー」

どうやら、高円寺の線香花火が一番に終わった。

「俺もだぁー」

山地もすぐに言った。

続いて長月で最後に俺だった。

「あ~ぁ。もう終わりかぁ…」

長月は携帯を取り出して時刻を見た。

そして、隣りにいる山地に言った。

「そうだ!山地君のアドレスと番号教えて?三枝もっ」

「うん!いいよー!」

山地は早速、長月と交換し始めた。

「あの……」

俺は横にいる高円寺に声をかけられた。

「わ、私にも教えてっ……!!」

高円寺は携帯を胸の前で大事そうに抱くと、相変わらずの口調で言った。顔は暗がりでよく見えなかった。

俺はクスッと笑うと携帯を取り出した。

「あぁ。先に交換しようか」

「う、うん!」

高円寺はパッと顔を上げた。パッチリとした綺麗な目が俺の携帯を見つめた。

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