スカイ・フラワー
「だから高円寺と話さないのかよ?」

「…別にいいだろ!」

橘は山地の怒鳴り声に驚いている。

「梨香、先行ってろ」

「うん…」

橘は言い返さずに素直に駅へと向かった。

「お前はよくても高円寺は良くないだろ…アイツは普通なフリしてるんじゃないのか?」

「……だったらお前が高円寺に何か言ってやればいいだろ」

「お前の尻拭いなんてやりたくねーよ。それに、高円寺には俺なんかよりお前の言葉が必要なんじゃねぇのか?」

「そんなの…できねぇよ……」

「お前らしくないな。俺はこんな奴に心開いた覚えはねぇ…。俺にとって山地幹也は親友だ。今のお前はただのボンクラだな」

「………」

「じゃあな」

俺は山地の返事を待たずに違う道を走って行った。






「長月っ!」

俺は、商店街を歩く長月を後ろから呼んだ。

長月は振り返ると、少し驚いたようだった。

「どうだった?」

「…山地に言うだけ言って帰ってきた」

「あらら。可哀相に」

「…山地はあんな奴じゃねぇのに何か高円寺に変な断れ方したのかな」

「無理もないわよ…」

「何が?」

「別にー」

「高円寺の好きな人って誰なんだよ…」

「ハァ……」
(三枝って鈍いのね……どう見たってアンタよ!……千広見てて気付かないとは…)

「溜め息すんなよ幸せ逃げてくぞ」

「いいでしょ…。早く山地君と仲直りしなさいよ?」

「余計なお世話だ。で、誰だよ?」

「さぁね」






長月の横顔は呆れた顔に見えた。俺はそれ以上何も言わなかった。

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