スカイ・フラワー
「………だから、ありがとう!」

「あぁ」

笑った高円寺の顔は花火の時と同じくらいにほころんでいた。

「ペンキは良し。高円寺、俺も自販機までついてくわ」

「えっ!?いや…」

「何だよ、イヤ?」

「っ……ううん!!!イヤじゃないっ!」

「じゃ、行こうよ」







「持てんのか?」

「うん!…何とか…」

高円寺は俺も含めて七人分の缶ジュースを手に持って歩いている。

「俺、持つよ?」

「平気!三枝君はペンキ持ってるし!」

コの字型の廊下を右に曲がろうとした時、やや前を歩いていた高円寺は突然走って来た男子生徒にぶつかり、倒れそうになった。

「きゃっ!!」

「あぶっ…!」

俺はギリギリ高円寺を支える事ができた。辺りには缶ジュースが散らばってしまっている。

「いってぇなぁ!!」

男子生徒は服の汚れを払うと言った。

「おい。お前、高円寺に謝れよ」

俺は男子生徒を睨んだ。

「…あぁ?」

「てめぇ、コイツが怪我したらどうすんだよ」

「さ、三枝君…」

高円寺が小さく言った。

「平気か?」

「う、うん。もういいよ」

高円寺は俺の後ろにいる。

「ケッ…」

その男子生徒はその場から走り去った。

「おいっっ!!」




グッ……。

高円寺はそっと俺の服の裾を引っ張った。
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