スカイ・フラワー
「信用ねぇな俺」

「別に」

長月は俺の隣りをかなり速く歩いている。でも、俺にはこの速さが心地良かった。俺の一人で歩く速度と一緒だ。

「俺も高円寺、応援してやろうと思うんだよ」

長月は一瞬俺を見てからすぐに前へと視線を戻した。黒髪が夕日に照らされ栗色に染まる。長月にはよく似合っている。

「で?」

「また聞くけど、高円寺の好きな人って誰だよ」








「…灯台下暗し」

「はい?」

暫くして返って来た言葉は、俺を混乱させるには十分に理解不能だった。

そして沈黙。

勿論、この沈黙も俺にとっては心地よいものだった。









「じゃ。またな」

「ばいばい」






「…なぁ。お前っていつも本屋寄るの?」

「……うん」

「…へぇ。じゃ」

この時、香は気付く筈もなかった。







夏葉は香を待つ口実に本屋で立ち読みしている事を。








そして、もう一つ……

夏葉の気持ちも、勿論知るよしも無い……






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