スカイ・フラワー
昔話
「昨日、メールサンキュ」
「うん!」
「今日で最後だよな?」
「そうだよっ!もう大部分は出来てきたから今日は早めに終わるって!」
「そうか。長月とかは?」
高円寺は、お化け屋敷の道具とその製作に熱を入れる生徒達でごった返す教室をグルリと見回して言った。
「さっきまで段ボール壁に貼ってたんだけど……」
「そう。ま、いいや俺何すりゃ良い?」
実は俺は遅刻した身である。が、高円寺はそんな事を気にしない様子で俺にゴミ捨てを頼んだ。
「私も一緒に行くね?」
「わりぃな」
「ううん!いこっ」
「あ。俺の後ろ歩いとけ。またぶつかるかもしれないから」
廊下は、文化祭でストンプやダンスをするクラスが練習場所として使っているので、危ないと言えば危ない。
「……ありがと…」
(前の事で気遣ってくれたんだ……やっぱり三枝君は優しいなぁ)
「あぁ」
ゴミを捨てて、階段を上がっていると長月が脚立を持って歩いていた。女の子に持たせるには不釣り合いな代物なのに長月は重たそうに持っていた。
「夏葉ー」
「あら。デート?」
「ち、違うよっ!!」
長月は脚立を階段に立て掛けて休んだ。
「バカかお前は。バカ大人しくゴミ箱でも持ってろ」
俺は長月に軽くなったゴミ箱を押し付けると脚立を持って、階段を上った。
「な、何よ!別に持ってくれなくても良いわよ!」
「そっちの方がまだマシだろ。軽いし。それに、俺はそこまで無神経な男じゃねぇの」
「………」
長月は黙ってゴミ箱を持った。俺はそれを尻目に教室までスタスタと歩いて行った。