スカイ・フラワー
「でもっ!!やっぱり……友達から…」

「うるさいっ!!」

(あーあ。キレてるし…ダルっ)

香は寄り掛かった本棚からゆっくりと体を起こした。

そして、片手に持った小説をパタンッと閉じた。

勿論、二人には聞こえない程の小さな音。しかし、その音は香が行動を起こすスイッチだった。







「あのさ。お取り込み中悪いんだけど…色恋沙汰にとやかく言うつもりは無いけど、ここ図書室なんで私語は慎んでもらえる?」

いきなりの言葉に二人は驚いている。そして、香の目には男子が、とても可愛いのに顔を恐怖で強張らせる女子の腕を掴んでいる光景が飛び込んだ。

何故かそれに、違和感を覚える香。

「あ……お前誰だよ!てか何で居るんだよ!」

長袖のTシャツをまくった女子の腕は細くて色白な肌だった。だが、それは小刻みに震えている。

「バカか。ここ図書室。本読んでんだよ、しかもアンタ等より先に居るわけ」

香は興味なさそうにドアへと歩みを進め、二人を通り過ぎた。そして、ドアの前で足を止める。

「そうだ!お前には関係ねぇだろ!出てけ!」

「…関係ねー………








わけねぇーだろうが!」

ガラガラーーーガシャンッ!!

香はドアを叩き開けると強い剣幕で男子を睨む。

「イラつくんだよね。アンタさ…しつこい。それと、直ちにその腕から手を離せ。痛がってるだろ。それでも男か」

「くっ……」

男子は腕を離した。すぐさま女子は後退りして距離をとった。

女子の腕は赤くなってしまっている。


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