*執事サマの甘い誘惑*
なんなのこいつ。
ムカつく…。
あたしはもう、俯くことしかできない。
東堂蓮が、歩いて近づいてくるのが分かる。
あ、止まった。
目の前で足を止めた彼を、もう一度見上げる。
彼はあたしと目線を合わすようにかがんだ。
「結衣」
「なによ…」
勝手に呼び捨て…。
「お前が俺を認めればいいだけの話だろ」
それは、契約を続行しろってことですか?
そんなの、まっぴらごめんです。
でも
こいつの瞳をを見てたら、拒めない自分に気がついてしまう。
「俺の助けがお望みなら」
東堂蓮の手が伸びてきて、あたしの左頬に触れた。
「俺の名前、呼んでよ」
…。
ほんとだ。
どうやらこれは…
「助けて。
…蓮」
あたしの『負け』みたい。
「かしこまりました、結衣サマ」
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