消された煙草
やがて頭痛が波が退くように去ると、私はもう一度目の前のドアノブに手を掛けた。
もう一回よく考えよう。何か思い出せるかもしれない。
ゆっくりとドアを引き、私は再び部屋に足を踏み入れた。
部屋の中は何も変わっていない、当然のことだが。
私は狭いキッチンに立ち、周りの物を見回した。
そして気付いた。
……このカップは、私のだ。この皿も、箸も。
しかし、こっちのカップは違う。グラスも見たことない…。
まるで自分の後から誰かが買い足したように、食器が増えている。
……あの、死んでいた女が?
私は彼女と一緒に暮らしていた?