消された煙草
私は彼女の身元が分かるようなもの、例えば免許証や保険証の類がないか辺りを探した。
「……ない。なんでないんだ?」
鞄や携帯電話など、あの女の物はリビングには何もなかった。
ならば…さっきの寝室に?
私は寝室へ続くドアに目をやった。
ゴクリ、緊張に喉が鳴る。
そっとそのドアに近付いて思わず耳を澄ませてしまう。
音なんて聞こえるはずもないのに。
死体が動くはずない。
自分の臆病さに自嘲の笑いが漏れる。
……馬鹿らしい。
ふっと短く息を吐き出してから、私は寝室のドアを開けた。