消された煙草
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「……はい、隣の住人の方から苦情が来ましてね。異臭がするって。で、返事もないもんだから合鍵使って……」
アパートの玄関口では此処の管理人が事情を説明している。
「あ、主任!どうぞ、入ってください!」
「殺しか?」
「えぇ、でもホシはそこに……」
主任と呼ばれた男が現場へ足を踏み入れると……。
「俺は女なんかじゃ……女なんかじゃ……お、俺はおと、男……」
気が触れたようにブツブツとしゃべり続ける髪の短い女と、床に全裸で倒れ、事切れている女の死体がひとつ…………。
しゃべり続ける女の唇には、血の様に赤い口紅―――。
《終》