初愛

再会

6月初め。
例年で言うとまだ梅雨の時期。

のはずなんだが今年は違った。

梅雨なんてあっという間におしまいで、気づけば暑苦しい日々を送っていた。


こんな時、つくづく窓際の席でよかったと思う。


3時間目の終了のチャイムが鳴り、前のドアから先生が出て行き、後ろのドアから入れ代わりで町田が眠そうに目を擦りながら入ってきた。

町田とは高校からの仲だが、3年間同じクラスということで他のクラスメートよりも仲がいい。

学校ではだいたい一緒にいるし、休みの日もよく遊ぶ。

元々、町田は人当たりがいい。
だからこうして俺も話が出来るんだと思う。

町田の席は俺の前で、椅子をまたぐようにして後ろを向いて座った。

「まだ6月だってのになんでこんなに暑いんだか」

町田はネクタイを緩めながら、持って帰らずに机に入っていた教科書を扇子代わりにしてあおぐ。

「異常気象ってやつだよ。最近流行ってんじゃん」

「流行ってるって。。。まぁそうだけどさ」

「それより最近遅刻しすぎじゃない?いいかげんにしないと呼び出しくらうよ」
「あーいいの、いいの。どうせ実家継ぐし、成績とか気にしないから」

「ふーん。町田がいいならいいけど」


実のない話が続いていたが、この暑さでほとんど頭に入っていなかった。





6時間目になると、さすがに暑さも少しは退いてきた。
残すはHRだけ。
早く家に帰ってクーラーの効いた部屋でジュースでも飲もう。

幸い足達は授業が終わってから5分もしないうちに入ってきた。

「少しは涼しくなったかぁ、さっさと終わらせて早く帰ろーな」

教師というよりは、ちょっと年上の友達って感じ。
まぁ年も20代だし。

「今日のHRで言うのは一つだけ!明日は絶対に休むんじゃねぇぞ。なんとこのクラスに転校生が来る!!名前はさきさかはるか。。。だったよな」

足達の言葉が妙に引っ掛かる。

「はるかちゃんかぁ。名前からして可愛いんだろうな」

町田たちは、まだ見ぬ理想の『はるかちゃん』に想いを馳せていた。

「ここ男子校」

俺の一言でクラスは静まり返る。

空気を変えるように町田が咳をした。

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