エル・ヴェナに関する証言
 俺はお袋の頭を少し撫でてやりながら、落ち着くように言い聞かせた。

 「とにかく、こんな状態じゃ人目につくから、早く帰ろう?そして……」

 帰ってどうなるものか分からないし、親父は望楼であった事を信じてくれそうにないけど、今はそうするしかなかった。俺は公衆電話から親父に迎えに来てくれるよう頼んだ(お袋はケータイも持たせてくれないので、こういうときには公衆電話を使うしかない)。

 十数分後、人気のない近くの公園で時間を潰していた俺たちの前に、親父の車が来た。

 「母さん、真吾、早く乗りなさい」

 親父はそう言って、運転席から手招きした。

 「親父、隣にいるのが母さんだって、信じるのかい?」

 俺がこう言うと、親父は一言こう言った。

 「私が誰と結婚したと思っているんだ!?」

 その言葉を聞いた時、望楼の兄弟姉妹よりも、エル・ヴェナよりも、俺たちを愛していたのが誰だったのか知ることが出来た。お袋も望楼で褒められた時よりもずっと可愛らしい笑顔を見せた……。
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