エル・ヴェナに関する証言
月村さん(1)
 帰宅した俺たちは、お袋をすぐ家の中に運びリビングでひと段落つこうとした。そ
の時……。

 お袋がソファに寝込んでしまった!

「母さん!?」

 慌てて俺と親父が駆け寄る。

「熱はない……疲れが出たんだろう」

 親父の言葉に少し安堵するものの、お袋の寝顔は決して安らかではなかったのが俺
の中に不安を呼ぶ。とりあえず毛布をかけてやった。

 しばらくして目をさましたお袋に、俺たちはホットミルクと軽食を出してやった。

「真吾、父さん……ありがとう」

 自らの不安を振り払うように明るい表情を作りつつ、お袋はゆっくり食事を摂って
いた。そして、意外な事を言い出した。

「真吾だけでも望楼に戻れればいいんだけど……」
「何を言ってるんだい母さん!?あれだけ派手にやりあって今更!」
「でも、あなたは……ううん、ごめんなさい」

 ここで俺たちは不安の正体に気づいた。まだ迷っていたのだ。そして、俺自身も……。

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