盲目の天使

この場にいない人間のことに、リリティスが気をとられているとわかって、

アルシオンは、胸の中に、もやもやとした気分が湧き上がった。

その相手は、他の誰でもなく、血の繋がった、兄。


「・・兄が気になりますか?」


「・・危険があるのではないかと。

救援に向かって、落盤に巻き込まれることも、あるのではありませんか?」


心から心配しているような、か細いリリティスの声。


「大丈夫ですよ。

供についたのは、コウガイ将軍といって歴戦の勇者ですし、

戦と違って、敵がいるわけではありませんから。

それよりも、これをどうぞ。あなたに似合うと思うのですが」


アルシオンは、箱から髪飾りを取り出すと、リリティスに手渡した。


「お誕生日おめでとう、リリティス」


「あの、私は・・」


掌に乗せられた髪飾りをアルシオンに返そうとして、

逆にアルシオンに手を握られてしまった。



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