盲目の天使
「親しいものは、私をそう呼びます。
あなたには・・・、シオンと呼んでほしい」
「ですが、それは・・・」
リリティスは、困ってしまった。
オルメが傍にいれば、なんとか自分を助けてくれるのかもしれないが、
あいにく、今は、席をはずしている。
改めて、機知に富んだ、オルメの素晴らしさに気づかされる。
「かまいませんから、シオンと呼んでください。髪飾り、挿してみましょう」
アルシオンは、そう言って微笑むと、リリティスの手から髪飾りをとって、髪に挿した。
「よく似合います。とてもかわいらしい」
それは、本心からの、褒め言葉だ。
「ありがとうございます。・・シオン様」
リリティスは、うつむいて、少し赤くなった。
「次は、様を取ってくれると嬉しいな」
目の前にいるのは、兄ではなく、この私だ。
恥らうリリティスの様子に、満足したアルシオンは、機嫌よく笑った。