盲目の天使
・・あぁ、翼を広げて、このままカルレイン様のところに飛んでいければいいのに。
そう、ジルのように、大空を羽ばたいて・・。
リリティスは、うっとりと思い描くと、急にジルに会ってみたくなった。
よく考えれば、なにかそら恐ろしい生き物ではないかという偏見で、
あまり、近づいたことさえない。
「オルメ。その鷹匠の方に、会うことはできませんか?」
「鷹匠にですか?」
「はい。カルレイン様の鷲にも、会って、お礼を言いたいのです」
オルメは逡巡(しゅんじゅん)した。
本来鷹匠は、位が低く、王族が直接会うような身分ではない。
しかしそれだけでなく、カルレインの鷲を調教しているオークリーという男は、職人気質の男で、
鷹匠としての腕は一級品だが、王族と言えど、気にいらなければ決して頭を下げないような男だった。
カルレインは、そんなオークリーを気に入って、自分専用の鷹匠として雇用しており、
しょっちゅうオークリーの鷲小屋に出入りしては、自分の鷲を調教していた。
リリティス様をお連れしても平気かしら・・・。
この数日、元気がなかったリリティスが、やっと笑顔を見せたのだから、
彼女の願いを、きいてやりたいと、オルメは思った。
「わかりました。では内密に」