盲目の天使
リリティスの声は、明るく、本当に楽しそうだ。
「いや、俺は何も・・・」
どうせ、怪我をするところだったと、文句を言われるのだろうと、辟易していたオークリーは、
まさか、礼を言われるとは思わず、すっかり面食らった。
・・変わった姫君だな。
ジルが突然飛び移るなど、今までになかったことだ。
カルレインでさえ、ジルを慣れさせるのに、四苦八苦して、
一ヶ月以上の期間を要した事を思うと、さっきの出来事は、夢ではないかとさえ思える。
オークリーは、目の前にいる盲目の少女を、まじまじと眺めた。
なにやら楽しげな予感が、ふつふつとわいてくる。
・・カルレイン様の女性を見る目は、確かなようだな。
オークリーは、無意識に、にやついた笑いを浮かべていたが、
生来のいかつい顔のせいで、それが、笑顔と認識されることはなかった。
一方、オルメは、青くなって叫んだ。
「さぁ、もう用事は済みましたでしょう。お部屋へ戻りますよ」
オルメに引きずられるように、腕を引かれたリリティスは、去り際に、
「また来てもかまいませんか?
今度はもう少し軽装できますから」
と言って笑った。